雪原(5)




「ルフィ、お前何やってんだよ」
サンジとゾロが声を合わせて聞いた。
深々と降り積もる雪。
ルフィは身動きせず外を見ていた。
「待ってる」
ルフィが一言つぶやく。
「何を?」
「誰を?」
サンジとゾロの声がまたかぶった。

「・・・エース」


願いが叶いそうな聖夜。
何かを願いたくなる・・・夜。


「チョッパー!!」
ナミのけたたましい叫び声が船内に響いて、
二人の足跡が聞こえた。
「ギャーーーーッ」
「ウソップ捕まえて!」
「おう!」
ウソップはナミに言われるがまま、
走ってきたチョッパーに向って両手を広げた。
「ギゃーーッ」
チョッパーはウソップに飛び蹴りをして、
走り抜けた。
「もう・・・役立たず!」
ナミは走りながら言った。
「チョッパー!止まりなさい!」
「やだぁぁぁぁ」
後ろを振り返って、
チョッパーは叫んだ。
そして。
前を向いた途端、
突っ立っていたゾロに思いっきりぶつかった。
チョッパーは飛ばされて、
シリモチを付いた。
青ッ鼻を摩りながら、
ゾロを見上げた。
「ゾロ捕まえて!!」
ナミはまた言った。
ゾロはチョッパーを摘み上げ、
ナミに向って放った。
「ギャーーーッ」
ドスン。
ナミはチョッパーを抱きとめて、
「サンキュ」
ゾロに言った。
「チョッパー何したの?」
ゾロはナミに聞いた。
「医者の不養生よ」
「風邪か?」
「そう・・・軽く熱あるのに、
クリスマスパーティー出たいって大騒ぎしてんの」
ナミはチョッパーを抱えて、
部屋に戻って行った。

「オレはトナカイだ!
クリスマスに風邪ひくトナカイなんて!」
「青っ鼻じゃ・・・暗い道を光らせることなんてムリ。
おとなしく寝てなさい」
ナミは自分のベッドにチョッパーを寝かせて、
毛布をかけた。
「一緒に寝てあげるから」
「やめろぉぉぉ」
「テレナイ、テレナイ」
ナミはチョッパーのツノにキスをした。


「うう、寒い」
ビビは甲板で震えながらつぶやいた。
「カルー!カルー!」
クエっという声がして、
後方からカルーが現れた。
「カルー!どこ行ってたの?何してるの!」
ビビはカルーを抱きしめた。

「あちし、暇だから、カルガモになってみたのよ」

「・・・・・ぇ?」
ビビの体が固まった。
恐る恐るカルーに目線を持っていくと。
カルーだと思って抱きついたものが、
おかま道になっていた!
「キャーーー」
ビビはありったけの声を集めて叫んだ。

「ビビちゃん?」
数秒後、勢いよくドアが開いて、
サンジが現れた。
「サ・サンジさん!カルーがおかまに・・・」
ビビはサンジに駆け寄って言った。
「あ〜ら。あちし驚かせちゃったみたいぃ。
コレ届けに来ただけなのよぉ」
おかま道は金色のリボンのついたプレゼントを投げて、
くるくる回りながら、船から消えていった。
サンジはそのプレゼントを拾い上げ、
それについてたカードを読み上げた。
「”友情の証に・・・おかまWAY”
ビビちゃんの知り合い?」
サンジは、びっくりして力の入らないビビを抱きとめて、
船内に戻った。
船内に入るなり、
カルーが二人の前を横切った。
「クエ!」


たしぎが見つめる双眼鏡に何かが映った。
「あれは・・・」
たしぎは気になって倍率を上げ、
波間に見失わないよう、その影を追った。
降り続く雪と、
霧の向こうにゴーイングメリー号が見えた。
影はソコに飛び移って、
中に消えていった。
たしぎは双眼鏡を船内に向けた。
「ロロノア・ゾロ!」
たしぎが叫んだ。
「大佐!ルフィ一味を発見しました!」
「やめとけ・・・」
スモーカーは葉巻を吹かしながら、一言。
「今日はクリスマスだ」
たしぎは双眼鏡を置いた。
「そーですね・・・」


「よぉルフィ!」
沈んでたルフィの後ろから声がした。
「エース!」
ルフィの顔が一気に笑顔に変わり、
エースに飛びついた。
「元気か?」
エースはルフィに聞いた。
「元気だ」
「ちょっと寄り道しただけだから、もう行くけどな」
「早ッ」
「ルフィの顔見れたから、もうココでの用は済んだ」
エースはルフィに似た笑顔を見せた。
「そーか」
「またな?ルフィ」
エースはまた冷たい海風の吹く外へ出て行った。
ルフィはエースを追って甲板に出た。
「またな、エース!」
返事の代わりに、エースは右手を上げた。

「お前、エース来るの知ってたの?」
エースを見送り、
部屋に戻ってきたルフィにサンジは聞いた。
「なんとなく」
ルフィは言った。
「野生の勘か・・・?」
ゾロが小さな声でつぶやくと、
「聖夜だからだろ?」
サンジは言った。


奇跡がおこりそうな夜。
降り積もる雪より、
深い想いが全世界を包んでいく。


「よーし。パーティはじめるか!」
「おー」
サンジの作った料理がテーブルいっぱいに並べられて、
ワインが注がれた。

「オレも!」
「もう!チョッパー!」
遅れてきたナミとチョッパーが加わって、
みんなグラスを掲げた。

「メリークリスマス!」






「雪原」END